男女問わず活躍できる社会の実現を目指すLiBでは、男性の育休取得を積極的に推奨しており、既に3名の取得実績があります。
今回は、LiBの激動の変革期を支えながら、Forbes JAPAN WOMEN AWARDの調査設計にも大きく貢献したコーポレート部長(当時)・土橋の、1か月間の育休体験記をお届けします。常に安定した仕事ぶりが評判の土橋が、「赤ちゃんとの生活」という予測不可能な事態の連続にどう対処し、そこから何を学んだのでしょうか。
大手コンサルから、35歳でベンチャーへ
ー まず、これまでのキャリアについてお伺いできますか?
LiBに入社する前は、監査法人とコンサルティングファームに勤務していました。様々な業種で、事業提携・プロセス改善・組織立ち上げ・国との交渉サポート等に携わり、カオスや炎上プロジェクトも経験。「決めたことを実行しきる」ということを学びました。
しかし監査法人もコンサルも、事業の「外」の人間です。事業の最終的な責任を負う立場を経験したくて、34歳のときに、事業会社への転職を決めました。中でもベンチャーに興味があり、いくつかの会社を検討していた時に、LiBの第一号社員だったメンバーと同僚の繋がりで知り合ったのが、入社のきっかけでした。
LiBには、一般的な人材ビジネスだけではなく、データ戦略なども含めたビジョンのユニークさに魅力を感じました。経営陣と面談し、社長の情熱や、取締役の近藤のパワフルさにも惹かれましたね。またLiBにはまだコンサル出身者がいなかったので、自分ならではのバリューを発揮できるのではないかと考え、入社を決めました。
ー 入社後はどんな仕事に携わりましたか?
入社してすぐ携わったのは、採用後の活躍支援や、組織開発を目的としたサービスです。コンサルでの経験を活かしつつ、自社サービスを開発することにワクワクしました。
ところがその後すぐに、会社の大きな構造改革の時期に突入します。自分のミッションも大きく変わり、コーポレート部長を務めることに。組織の再編から、3名という少人数体制で変革期のバックオフィスを支える、というチャレンジが始まりました。
財務や経営企画など、監査法人やコンサルの経験を活かせるミッションではありましたが、めまぐるしく変化する中で、物理的な忙しさに加え、精神的な負荷も少なからずありました。とにかくメンバーのメンタルに気を配り、バックオフィスの定常業務をスピーディに、かつ正確に回すことに徹しました。皆で支え合い、なんとか激動の渦の中を泳ぎ切った感じでしたね。
ー 変革期のバックオフィスを少数精鋭で守りきるのは、かなり大変だったと思います。本当にお疲れさまでした!そして同時期に、Forbes JAPAN WOMEN AWARDにも携わっていましたね。
はい、メインミッションの傍ら、Forbes JAPAN WOMEN AWARDのサーベイ設計にも携わりました。これは2019年のアワードの際に自分一人で土台を設計したものが、2021年にプロジェクト化され、システム実装し、より本格的な運用に向けて進化することになった形です。
自ら講師を務め、女性活躍推進に関するウェビナーも開催(2021年)
このサーベイとアワードは、「女性活躍のものさし」として市民権を得ることを目指して取り組みました。このプロジェクトを通して、世の中の女性活躍推進の現状を知るとともに、ジェンダーギャップ問題についての、自分自身の解像度が一気に上がりました。今後もっと賛同する企業を増やしていければと思っています。
妻のつわりで、自分のマインドが大きく変わった
ー さて、いよいよ本題に突入しますが、昨年末にパパになりましたね。おめでとうございます!奥様のご出産の前から、家庭との両立を意識されていましたよね。
そうですね。昨年の夏頃から、妻のつわりが重かったこともあり、そのケアや家事をするために、勤務時間を調整していました。
業務量やミッションをセーブすることなく、早朝の時間を有効活用して対応しました。ちょうどコーポレート部門は子育て中の女性メンバーばかりだったので、事情を理解し、快く協力してくれたことがありがたかったですね。
ー 今までとは違う働き方で、お子様を迎える準備にチャレンジしたわけですね。
はい。当たり前ですが、つわりなんてまったく未知の世界です。でもこのつわりのケアを通して、家事や育児に対する自分のマインドの変化があったんですよね。
ビジネスの世界では、不確実性を避けて物事を判断しますが、つわりは、その真逆のものでした。気分の悪さにいつ襲われるか分からないし、食べられるものもコロコロ変わる。個人差が激しく、かつ変化する。あまりにもアンコントローラブルな事象に、初めは少々面喰らいました。
よく、家事や育児が大変だという女性に対して、男性が「俺だって仕事が大変なんだ」と言ってしまうケースがあるじゃないですか。正直なことを言うと自分も、最初の頃はその気持ちが少しあったんです。早朝から仕事して、日中は妻のケアをしながら、掃除や洗濯、苦手な料理などをこなし、そしてまた夜は仕事に集中し…という生活はやっぱり大変で、「なんで自分だけこんなに忙しいんだろう」と思うことが何度もありました。
でも、自分のそばであまりにも辛そうにしている奥さんの症状…例えば「水すら飲めない」みたいな事象についてネットで調べているうちに、大変な事例が色々あることを知って。情報収集して解像度が上がり、最終的に「いちばん大変なのは本人である」という考えに行きついたわけです。一周回って、反省しました(笑)。
そこから明らかに、自分の中でマインドが変わりました。「自分にできることは積極的にやろう」という覚悟感のようなものが生まれましたね。ちょうどコロナ禍で、在宅勤務ができたことにも助けられました。オフィスに出社して、家にいられる時間が物理的に少ない生活だったら、妻の苦しみにきちんと向き合うことすら難しかったかもしれません。できることにも限りがあったと思います。
自分がいないと回らないのは、職場よりも家庭のほうだった
ー 男性は決して経験できない苦しみにきちんと向き合い、自分にできることを探すスタンス、かっこよすぎます…。 その後、奥様は無事にご出産され、1か月の育休を取得されましたね!
はい!育休取得は、上長である取締役の近藤からの勧めでした。「LiBは、男性が育休を当たり前に取得する会社であるべき」という話をされて。しかも2~3か月、最低でも1か月は取得することを推奨されました。
その時正直、1か月の取得も難しいと思ったんですよね。当時の自分のポジションを考えると代わりもいませんし、自分がいないと絶対に回らないと思っていましたから。
でも実は、自分がいないと回らないのは、家庭のほうでした。特に我が家は里帰り出産をしなかったので、もし自分が育休を取得しなかったら、日中は出産したばかりの妻のワンオペになるところでした。それは到底無理だということを、のちに知ることになったわけです。
ー ずっと仕事が中心の生活だった方にとっては、1か月穴を空けるのも勇気が要りますよね。
そうですね。だからしっかり準備しておこうと思ったんですけど…実は出産が予定日よりも1か月早まって。忘れもしない、月初の全社会議の日の直前でした。妻に急な出血があり、病院へ行って、もしかするとそのまま出産の可能性がある、と言われたんです。全社会議の司会の代打を直前に頼み、結局その日の14時頃に娘が生まれました。急な代打の依頼も快く受け入れてもらえたことで、出産の立ち合いに集中できたので、本当に感謝しています。
バタバタする中で急に産声が響いた時は、まさに「生命の誕生」を感じて、すごく不思議な気持ちになったのを覚えています。恐る恐る抱っこして、あまりの軽さと、自分を見つめているような瞳の輝きに、驚きと感動がありました。
目に入れても痛くない、土橋家の愛娘(写真は生後3か月、最近の様子)
ー 急なことで、ドキドキしたでしょうね!奥様退院後、いよいよ育休に突入して、どんな生活でしたか?
もともと子どもができる前は、家事や育児は、なんとなく「サポートする」という受け身の感覚だったと思います。でもつわりの件でマインドが変わったこともあり、どうせ育休を取るなら主体的に取り組もう、と考えました。
主体的に取り組むためには、目標設定が必要です。自分はまず、「母親と同じような存在になる」ことを目標に設定。しかし途中で変更し、「義母」をベンチマークとして目指すことにしました。つまり、子どもだけではなく、妻やその周辺をケアする人ということです。やっぱり「母親そのもの」と同じレベルになるのは現実的ではなくて。自分がやるべきことを見極めて、それに集中しました。
生まれたばかりの子どもは予測不可能で、本当に裏切りの連続でしたね(笑)。どう接していいのかわからないし、冗談抜きで本当に夜寝れないんですよね。やっと寝た!と思っても、「うーうー」という唸り声がしたり(笑)。静かなら静かで、布団で窒息しているじゃ?などと心配ごとが尽きず、心から安心できる時間がないんです。
ー わかります…。常にものすごい緊張感がありますよね。
本当にそうです。でも、自分は完全に「母親と同じ」にはやっぱりなれない。だから、できるだけ、大変さを分かちあう努力をしました。
例えば夜中のおむつ替えや授乳は、眠くても一緒に起きて、自分にできることをやりました。妻が授乳に集中している中で、自分は男性目線で気づいたことを改善するようにしたんです。暗い中でスムーズに動けるようにおしりふきを置く位置を変えるとか、ミルクのお湯を寝室で用意できるようにするとか、細かいけど影響の大きいオペレーションを改善しました。これは仕事と同じような考えで取り組めるので、率先してやりましたね。
生後間もない我が子に、ドキドキしながら授乳
また、日中に少し仕事をしていても、家事や、泣きだした子どもの世話で中断を余儀なくされます。だからいかにまとめて効率的にやるかを考えました。このとき、同じ部署のママさんメンバーたちが、普段ものすごく生産性の高い動きをしていた理由がわかった気がしました。常に効率を考え、工夫して生活しているのだなと実感し、尊敬しましたね。
経験したからこその気づきを、男性にも伝わるようにシェア
ー 体験したからこそわかることって本当に多いですよね。奥様も心強かったのではないでしょうか。
そうですね。妻からは本当に感謝されて、ちょっといいクリスマスプレゼントをもらいました(笑)。たった1か月間ではありますが、されど貴重な1か月。一度自分自身が経験すると、「男性が育休を取得する必要なんてない」とは間違っても言えなくなると思いました。
同時に、女性が出産を機にキャリアを諦めてしまうことが多かった理由や、その感情も、少なからずわかった気がします。想像以上に壮絶でしたから。だからリモートワーク含め、なんとか無理なく仕事を継続できる仕組みをつくって、男女ともに育児をしながら仕事をしていく流れをつくっていきたいですね。
育休中どんな生活で、何がどう壮絶だったのかは、男性陣にも伝わるように、ビジネスに例えてSlackで全社に向けてシェアをしました。
社内の男性が理解しやすいように、新生児育児をビジネスに例えてSlackでシェア
ー 経験者が気づきをシェアしてくれることで、社員の男性育休への意識がより高まりますね!
そうですよね。さらに組織開発をする立場としては、育休を取りやすい組織にするためには下記の3つがポイントだと考え、それをまとめて組織長にもSlackでシェアしました。
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1. 上長が率先して育休を取得し、推進する。
2. 「育休を取って当たり前」という風土を醸成し、受け入れる体制をつくっておく。
3. 抜けた業務をカバーしやすいように、日ごろから、属人化していることを解消しておく。
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2.に関しては、LiBはもうできあがっているので、本当にありがたかったですね!
自分自身が、説得力のある存在になれるように
ー これから育休を取る男性たちや、逆に男性育休なんてなかった時代の方々に、なにか伝えたいことはありますか?
まず、これから育休を取る次世代の方には、やっぱり「最低でも1か月はとったほうがいい」と伝えたいですね。また、それぞれのご家庭の状況にもよりますが、里帰り出産を選択せず、夫婦で試行錯誤してみることをおすすめしたいです。この一番大変な時をどう乗り越えたかが、今後の家事育児のスタンスに繋がるような気がしています。
制度設計をする立場からすると、男性育休の標準期間を、産後いちばん大変な「最初の2か月間」にするのもよいかな、と考えましたね。また多胎児の場合は、さらに長期間の取得が可能な設計が望ましいと思いました。育休期間中は会社のコスト負担もないので、例え長く取得しても財務面での懸念はありませんからね。
また、男性育休取得に消極的な方、特に管理職の方々には、もう「優秀な人材の定義が変わってきている」ということをお伝えしたいです。
昔は、仕事にのめり込んで、自分でやらなくていい作業は誰かに任せて、それこそ家事育児も奥さんに任せて、とにかくタスクに集中!売上を上げる!みたいなタイプが「優秀」と言われていたかもしれません。が、令和の時代は、細かい事務処理も、家庭のこともスマートにこなしながら、それでも高い成果を出せる人が「優秀」であると見なされます。もう、仕事の進め方もマネジメントも、生き方も、昔のスタイルは通用しなくなってくるんですよね。
ー なるほど。言われてみればLiBのハイパフォーマーも、男女問わずそういう方が多いですね!
そうですね。自分自身、家庭にもちゃんとコミットしつつ、ビジネスでの成果を出し続けられる人でありたいですし、そういう考えに理解のある人と一緒に働きたいと思っています。育休は終わりましたが、育児はまだまだ始まったばかりです。これからも仕事と育児を自分なりに両立して、説得力のある存在になりたいですね。
ー 若い世代の男性も、自分にその時が来たらきっと土橋さんに相談したくなりますね。期待しています。ありがとうございました!
土橋さんってこんな人!
★お子さんが大きくなったら一緒にやりたいことはありますか?
来年の冬は、コタツに一緒に座って(コタツと自分の間に子どもを座らせて)、一緒にみかんを食べたいです。大きくなったら、二人でデート(笑)。なんでも買ってあげちゃいそう…!
★仕事でいちばんアドレナリンが出るのはどんな時?
ビジネスプラン等を考えたり、それに関する面白いインプットがあった時ですね。
★土橋さんが思う「LiBあるある」を教えて下さい!
宴会好きで盛り上げ上手の人に限って、実はそこまでお酒が強くない人が多い気がします(笑)。
★土橋さんにとっての自分らしい仕事のカタチとは?
仕事とプライベートがお互い制約にならず、それぞれ自分がやりたいことができるようになりたいですね。
インタビュー・撮影:岡田 麻未(株式会社LiB 広報)
書き手:高嶋 朝子(株式会社LiB プロダクト部門)
WEBメディアや広告の制作ディレクション、イベントプロモーションなどの仕事をしながら、プライベートでは結婚・出産を経験。2017年、自身のライフイベント経験を活かせる事業テーマに向き合うため、LiBにジョイン。リモートやフレックスを活用して二児の子育てをしながら、コンテンツクリエイティブの企画制作、ライティングを担当。