目次
■ 前回のサーベイで特に高かった評価スコア
□管理職の取り組み実感度・経営陣の関与:アワード全参加企業全社のうち、1位
□管理職の取り組み実感度・戦略性:アワード全参加企業全社のうち、1位
■ 取り組みのポイント
□ 経営理念に基づく、女性向けだけではない取り組み
□ 管理職昇進に対する不安を、マインド醸成研修で払拭
□ イクメン制度の浸透と、変化しはじめた男性の意識
□ 社長・経営陣のダイバーシティ&インクルージョンへの積極関与
経営理念に基づいた、「女性向け」ではない取り組み
ーダイバーシティ推進への取り組みは、リコーリース様ではどのような位置づけなのでしょうか。
当社は、「一人ひとりが尊重しあい楽しくいきいきと働ける環境づくり」を経営理念の中で掲げております。つまり、多様な人材の活躍を引き出すダイバーシティ&インクルージョンは、当社の人材マネジメントの基本となっています。
もともと当社は女性社員の比率が高く、まずは女性が辞めずに長く働ける環境づくりが必須と考え、仕事とプライベートの両立支援策の拡充を進めてきました。その結果、女性社員が結婚や出産等のライフイベントを経ても働き続けられる環境が整いました。
そのうちに、単に「長く働ける」だけではなくて、さらに「活躍できる」環境づくりが課題となりました。その観点で取り組みの内容も進化し、今では女性に限らず全ての社員に向けて、「多様な人材の活躍推進」と「両立支援と働き方の見直し」の両軸で進めています。
「私にもできる」というマインド醸成が、女性管理職比率の向上のカギ
ー経営理念が取り組みにしっかりと反映されているんですね。前回のサーベイの結果では、「女性管理職比率」において高いスコアが出ていました。どのような取り組みをされたのか教えてください。
社員数が男女半々にも関わらず、女性管理職はとても少なかったんです。「活躍」を推進するにあたり、まずはリーダー的役割への意欲を高める施策として、管理職候補となり得る社員とその上司を対象に、女性管理職育成研修を実施しました。
まず力を入れたのは、女性自身のキャリアに対するマインドを醸成するための教育です。社員の意識調査の結果、男性と比較して女性のキャリア意識が低いことがわかりました。「管理職なんて、私にできるわけがない」と考えている人が非常に多かったのです。
そういう思いが生むキャリアの機会損失は、非常にもったいないですよね。そこで、「これなら私にもできるかも」と思ってもらえるような研修プログラムを実施しました。具体的には、「管理職はこうあるべき」という先入観をなくし、多様なリーダーシップのあり方を考えるというものです。
そこから少しずつ女性管理職の人数が増え始めたので、2019年頃から内容をリニューアルし、マインドだけではなく、もう一段レベルを上げた研修を実施しています。具体的には、既に管理職となった人も対象に、経営数値の見方や、企業経営に関する基本的知識、全社的見地から俯瞰するための知識など、高いレベルのビジネススキルをインプットしてもらい、経営人材を目指せるような設計となっています。
ー取り組みによって、実際に女性社員の皆さんが勇気づけられたのでしょうね。
そうですね。今年1月に、女性社員に対して管理職チャレンジに関するアンケートを実施したんです。「管理職を目指したいか?」という質問において、以前は「なりたくない」という回答が多かったのに対し、「わからない」という回答が増えていたんですよね。
これは、「全くなりたくない」わけではなくて、興味や関心はあるけれど、「本当にできるのかな?」と迷っている証拠だと捉えました。
事実、女性はライフイベントの影響を非常に大きく受けるので、どんなに優秀な人でも「この先どうなっていきたいのかわからない」というフェーズがあるのは当然のことです。だからこそ、「私にもできるんだ」と思ってもらえるような発信を継続することが大事だと考えています。
少し前まで、「管理職になるなんて、ごく一部のスーパーウーマンでしょ?」という雰囲気が、社内のみならず世の中にもあったと思います。そうではなくて、きちんと実績を出し、会社の方向性を理解し、自己研鑽をしていれば、本当に誰にでもチャンスはあるということを伝え続けていきたいです。
実際に、管理職候補に挙がっていたにも関わらず昇進試験を断り続けていた女性社員が、今回改めてオファーしたら受けてくれたというケースがありました。子育ての状況の変化など様々な要因があったのかとは思いますが、ご自身のマインドの変化、そして周囲の変化が「やってみようかな」という気持ちを後押ししてくれたのかもしれません。
こういった事例を発信することで、後に続く女性社員を勇気づけ、誰もがチャレンジしやすい空気を作っていきたいです。
イクメン制度の浸透と、変化しはじめた男性の意識
ー女性のみならず、誰もが活躍できる環境づくりというところに繋がっていますね。さらに御社では、男性の意識改革にも力を入れているとお伺いしています。
「両立支援」という観点では、男性の育児参加が大きなテーマです。当社ではかなり前から、男性の育休の必要性について社長自らが発信されており、取り組みが一気に加速した経緯があります。
具体的には、「育メン☆チャレンジ休暇制度」という制度で、子どもの生まれた男性社員の積極的な育児参加を促進することを狙いとして、2015年度に導入されました。最低5日間、本制度での休暇取得を積極的に推奨し、育児に自主的に参画してもらおうという仕組みです。
実は制度を始めた当初は、「人の家庭に踏み込んでほしくない」「そんなことほっといてくれ」といった反発の声もあったんです。
しかし、実際に制度を利用した社員の報告書には、「休業して育児にコミットすることで、奥さんの大変さが初めてわかった」「子どもと一緒にいられる貴重な時間を、会社が提供してくれてありがとう」といったコメントがたくさんありました。配偶者の方からも多くの感謝の声をいただきました。
「たった1週間足らずの育休で何がわかる?」という考えももちろんあります。でも、全くやらないよりは、まずは少しでもやってみることが非常に大事です。制度利用者からは、育休期間だけでなく、復帰後も保育園の送りを担当したり、配偶者の方が残業の日は早めに帰ったりと、上手に育児の分担ができているという話も聞きます。
ー制度を通して、男性の意識が変化し始めているんですね!
今では、これから子どもが生まれるという男性から、事前に相談が入るようにもなりました。同じ部署で育休を取得した先輩など、横のつながりからの情報共有で、「自分も取ってみようかな」という雰囲気になるんですよね。制度がスタートした当初に比べると、男性の意識が変化しつつあるのを感じます。育休を起点とした男性の育児参加が、文化として定着しつつある感触が、とてもうれしいです。
社長をはじめとした、経営陣の積極関与
ー今でこそ増えてきている男性の育休ですが、かなり早い段階から、社長自ら旗振りをされていたというのが素晴らしいですね。リコーリース様では、社長を含め、経営陣のダイバーシティ&インクルージョンに関する積極関与が非常に特徴的ですよね。
現社長のみならず、代々にわたって、ダイバーシティ推進については本当に積極的でした。社員研修の中でも必ず社長による講義がありますし、ダイバーシティ関連の全社員向けの発信には、必ず経営層のコメントもあります。経営上の重要課題だということが、社員に伝わりやすい環境かと思います。
また経団連が今年、会員企業の女性役員増員に向けた活動を始めましたよね。各企業の経営トップが2030年に、女性役員比率を30%以上にすることを目指すというものです。この「2030年30%へのチャレンジ」に、当社も賛同しました。役員比率だけでなく、管理職比率も30%以上を目指すことが中長期の目標です。こういったダイバーシティにおける全社方針の旗振りを、社長自らが率先しておこなってくれることが社員一同とても心強いですし、当社の理念に基づく経営の大きな力になっていると感じています。
Forbes JAPAN WOMEN AWARD 受賞後の効果
ー経営陣が積極的に推進してくださると、女性のみならず全ての方が勇気づけられますね。最後に、前回受賞後の効果についてお聞かせください。
このアワードに限らずですが、新卒採用において女子学生のエントリーが増えたり、女性活躍についての勉強会のお誘いを社外からいただいたりする機会が増えました。社内でも、ダイバーシティ精神が少しずつでも認知されてきているのを感じます。
Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2019 アワード受賞の様子(前方左から2番目がリコーリース様)
ー貴重なお話をありがとうございました。
インタビューを終えて
社員のマインド醸成に地道に取り組んでこられたリコーリース様のお話からは、「自分もやってみようかな」という一人一人の小さな心の変化が、会社の大きな変化につながっていることがわかります。それは、「女性の管理職へのチャレンジ」も「男性の育児への参加」も同じ。女性だけではなく全社員に向けたエンパワーメントが効果を発揮している、非常に素敵な事例ですね。
経済面におけるジェンダーギャップ解消に寄与するアワードへ
本アワードは、人数比率や育休比率、福利厚生などの「働きやすさ」を基準にした選出ではなく、女性リーダー、プロフェッショナルを続々と輩出している企業と、自ら道を切り拓き自分らしく働く女性を讃えるアワードとして、2016年に発足しました。今回は、女性向けの施策についてだけでなく、企業のジェンダー平等への取り組み、女性に対するエンパワーメント、男性の意識と理解等について調査を実施。社内の女性活躍推進のために大きなアクションを起こした人物やチーム、女性登用を進めることで成長を加速させた事例に着目して、企業のポジティブな努力を見える化し、経済面におけるジェンダーギャップ解消に寄与するアワードを目指します。
→Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2019 前回までの情報はこちら
(この記事は、 2021/06/23 にForbes JAPAN BrandVoice Studioに掲載されたものです)