HR Knowledge Camp 2021は、『激動の2020年を経て、2021年の「雇用」や「組織の在り方」はどう変わるのか?』をコンセプトに掲げ、各テーマを代表する経営者・人事責任者を招いた1時間のトークイベント。(全6回開催)3日目となる2月18日は、「失敗しないオンライン選考〜本当にオンラインでスキルマッチとカルチャーマッチ見抜けますか?〜」をテーマに、株式会社 ROXX 代表取締役 中嶋氏、株式会社スタジアム 執行役員 熊本氏に登壇いただきました。
【登壇者】
株式会社ROXX
代表取締役
中嶋 汰朗氏
1992年東京生まれ。大学時代の2013年、株式会社SCOUTERを設立。これまでに累計24億円を資金調達し、HR Techを代表する企業の一社へと成長させる。2019年7月にSCOUTERからROXXへ社名変更。日本初の月額制リファレンスチェックサービス『back check』や、人材紹介会社向けの経営支援プラットホーム『agent bank』の開発・運営を行う。
株式会社スタジアム
執行役員
熊本 康孝
2008年株式会社リクルートに入社。主にグルメサイト「ホットペッパー」法人企画・営業に約7年間従事する。株式会社スタジアムではリクルートでの経験を生かしインタビューメーカーの起案を行い、営業責任者として自らも営業の最前線に立つ。
【ファシリテーター】
株式会社LiB
LiBzCAREER営業部長
江成 充氏
2006年インテリジェンス(現パーソルキャリア)に新卒入社。人材紹介の法人営業・キャリアアドバイザーに従事。人材紹介と求人広告のマネジメントを経て2018年11月に株式会社LiBに参画。営業部長、転職支援部長を経て再度営業部長に着任。コロナ禍で40本を超える自社・共催ウェビナーに登壇。「日本中の一人ひとりが“自分以上の自分に出会える“場づくり」を掲げる。
2020年で急増したオンライン選考の実態とは!?
――2020年コロナ禍でオンライン面接の導入が加速しましたが、実際にどのような反響がありましたか?
熊本さん:
コロナ禍でWeb面接システムを導入する企業様は増えています。当社では、2017年に面接力を強化する『インタビューメーカー』を正式リリースしまして、Web面接を企業様に導入いただきました。導入企業数は2017年を1とすると、2020年で60倍になっています。
Web面接特化型システム『インタビューメーカー』
アフターコロナにおいても、オンライン面接は、対面での面接と併用しながら活用されていくと思います。Web面接の課題は、言語情報だけで、どのように人物評価と魅力づけを行なっていくのかだと感じています。
――最近では音声SNS『Clubhouse』を活用した採用も話題ですが、顔が見えず音声のみなので、誰がではなく、何を言っているか注目されることも増えていくように思います。ただやはり、非言語情報から相手を知ることが大事ですよね。
熊本さん:
はい。初対面に感じる印象の55%は視覚情報で、38%は聴覚情報ですから、非言語からの情報を丁寧に確認することはとても大事です。
――ROXXさんの採用活動はいかがでしょうか?
中嶋さん:
最終面接は対面ですが、それまでの面接はオンライン面接中心です。
基本的なスキルや、これまでの仕事内容に関するやりとりはオンラインでのコミュニケーションでも良いのですが、最終の意思決定までにはお互いに対面で会って雰囲気を知りたいというニーズは僕たちに限らず多くの企業並びに候補者の方も同様の考えをお持ちになっていると感じていますね。
――まさかオフィスに中嶋さんのギターが8本置いてあるとは思わないですよね。
中嶋さん:
そうですね(笑)。そういったオフィスの雰囲気も含めて組織カルチャーとの相性も大切だと思うので、最後は対面でお会いさせていただくようにしていますね。
面接で見えない、相手を知るには!?
――実際オンラインだけで、相手を知ることができるのでしょうか?
熊本さん:
当社で意識していることは、オンライン面接でも、対面での面接も、どちらも言語情報を深掘りして相手の思考性や人間性を知っていくことです。相手の表情や雰囲気など、非言語の情報を知るときには、対面の場を設けています。
面接側のスキルの向上も必要なので、面接の映像を先輩と一緒に振り返り、質問内容や深掘り方をアドバイスするようにしています。
――中嶋さんはリファレンスチェックサービス『back check』を運営されていますが、サービスの意義について教えていただけますか?
中嶋さん:
『back check』は、候補者の前職での実績・人物像などを、本人経由で第三者へ照会できるオンライン完結型のリファレンスチェックサービスです。候補者と同じ職場で働いたことのある第三者から生の声を集めることで、一緒に働いてみないとわからない「候補者の働く姿」が見えるようになります。
スキルが高くても、カルチャーが合わなければ退職につながるリスクが高まりますし、本人が得意・できると思っていることでも、他人が同じように判断しているわけではない場合もあります。
本人と一緒に働いたことのある同僚や上司との認識のズレがどれだけあるのか、面接での評価とリファレンスでの声との整合性から推しはかることができます。
――具体的にどのようにチェックするのでしょうか?
中嶋さん:
企業様にもよりますが、リファレンスを書いていただく推薦者は2〜3人で、それぞれ10〜20問の質問に選択式・記述式の両方で答えていただきます。
例えばリーダー層の採用選考時に、back checkでの回答結果においてある項目の評価が低かったとします。その点について、その後の面接でのやりとりを通して確認し、本人も自覚しているならば業務内容を得意な領域に合わせて変えたり、マッチングに関する改善の余地がありますよね。
リファレンス回答者への質問内容は、「候補者のもっとも貢献した実績を教えてください」「どのようなタイプの業務に苦労していましたか?」「もう一度候補者と働きたいですか?その理由は?」といったものです。
――正解のない質問を聞いていくんですね。
周りから評価が低かった項目があった時、本人も自覚しているならば改善の余地があるけれど、本人が面接ではできると言っていて、リファレンスで周りは苦手だと思っていたら、認識のズレがあることを確認できます。そしてこの認識のズレがミスマッチに繋がってしまうのです。
1時間ほどの面接のなかで、「これまでの職場で何をしていたのか?」という点の深掘りに割ける時間は限られているので、候補者本人がどのように自分自身を客観視できているのかを、企業側はリファレンスをもとに見極めていくことが可能となります。
――候補者側は良いことを書いてくれそうな人にお願いしたいところだと思いますが、実際に推薦者は、本当のことを書いてくれますか?
中嶋さん:
どのリファレンス回答者がどんな内容を答えたのかは候補者には最後まで共有されない仕組みです。回答者にとって、候補者が苦手である業務や環境を敢えて得意と伝えるメリットは特にありませんから、率直に回答いただける傾向にあります。リファレンス回答者は候補者自身が指名するのですが、蓋を開けてみるとネガティブな内容も含まれているケースが頻繁にあります。実は不満が溜まっていて、評価していなかったということも。複数人に回答を依頼するので、例えば、元上司からの評価は高いが、元部下からは低いということもありますし、その逆も然りですね。
――候補者のメタ認知と、一緒に働いていた人との印象のギャップがわかりますよね。リファレンスチェックはどのタイミングで行われますか?
中嶋さん:
これまで累計1万件以上のリファレンスチェックをback checkを通して行っていただいてきましたが、その多くが最終面接の直前での実施です。採用担当者から候補者には、「最終面接に合わせてリファレンスチェックをさせてください」と選考の最初の段階で伝えておくことを推奨しています。リファレンスチェックを依頼することに抵抗があったり、該当者が見つからないという候補者の場合は辞退されるケースがほとんどです。
また、割合としては少ないですが最終面接の後に実施するケースもあります。こちらはリファレンス回答をほぼ確実に取得しやすいタイミングです。中には一次面接の段階でリファレンスチェックを依頼している企業様もいます。
――書類合格して、次回面談するタイミングでその旨を伝えるんですか?
そうです。誰からもリファレンス回答に協力いただけないということがないよう、元上司には今すぐに依頼できない場合は元同僚には依頼しやすいのでそちらを先に進めましょう、というように案内いただいています。
――カルチャーを見極めるための質問にはどんな項目がありますか?
中嶋さん:
性格や考え方、行動特性が最も顕著に現れやすいのは物事がうまく行かなかった時だと考えているので、ピンチの際にどのような立ち回り方をするかがわかるような質問をしています。
――『back check』の回答収集はどれくらいですか?
中嶋さん:
平均4営業日です。約95%が期日に間に合わせて回答くださっています。
――リファレンスチェックを行なった時に、予想以上にマイナスの結果が出てしまい、内定を取り消したいという企業様もいるのでは?
中嶋さん:
そういったケースでは内定取り消しそのものがリスクになるため、最終面接の段階で「採用したい」と思った時も先走って内定を伝えずに、「リファレンスの内容も含めて、総合的に最終判断します」とお伝えする流れをオススメしています。
――まだまだ日本ではリファレンス文化が進んでいないですが、リファレンスに自社のメンバーがポジティブな印象を持っていない場合もあるのではないでしょうか?
中嶋さん:
実際にback checkを導入して活用いただく過程で、その効果とともに理解いただけていますね。リファレンス回答者への時間と手間という面でのコストが発生しますが、採用フローのリードタイムそのものは増えていません。
事前にどんな価値観のメンバーが新たに入社するのか、どんな環境だとその方の持ち味が発揮されるかを事前に配属部署に伝えられるというオンボーディングでのメリットもあります。
――相手を知るために、どんなWeb面接システムではどんな工夫がされていますか?
熊本さん:
まず、Web面接の実態をお伝えします。面接の待ち時間についてでは、対面だと10〜30分は待ちますが、オンラインだと約6分です。
1回あたりの面接時間は、対面では平均52分が、オンラインでは平均38分に短縮されています。これは人物評価・魅力づけをする難易度が上がっているとも言えます。
候補者側がオンライン面接で気になることとしては、面接官の面接環境・タイピング音・写り方などがあります。画角がななめだったり、照明が暗いと候補者の採用担当者に対する評価は低くなる場合も。魅力づけするなかで、オンライン面接だからこそ注意しないといけません。
――魅力づけをするために、最低限のインフラを整えていかないとですよね。
熊本さん:
Web面接屋の当社では、自社の面接時に使うライトやマイクを規定しています。
また面接官との相性や組み合わせの運で、面接結果に差がついてはいけないと考えていまして。面接官の実力の可視化と、判断基準の均質化を目指し、『imトレーナー』を2019年に開発しました。
候補者がリラックス状態と、ストレス状態、どちらも高い方がパフォーマンスを発揮するんですよ。
リラックスして、いつものあなたを見せてくださいだと、実はなかなか本音は見えてこないんですよね。候補者が本来の自分を見せられるかどうかは、面接官の力量に影響しています。
中嶋さん:
面接官もあらゆる角度から振り返ることが重要ですよね。選考を振り返ることができている面接官はほとんどあまりいないように思います。営業の場合は、ロープレして改善をとなりますが、選考の場面で面接官側がその振り返りと学習ができているのかは疑問ですね。
熊本さん:
『imトレーナー』では、面接官のロールプレイング研修も実施しています。面接官である自分が何を話し、相手にどんな印象を与えているかを可視化するような内容です。
具体的には、面接時間に話した内容がすべて文字起こしされます。どんな質問をしたのかや、深掘りしきれていなかった内容が見えてきます。自分ごと化されてはじめて改善につながるので、インプットだけの研修はあまり意味がないですよね。
――採用活動において、ブラックボックスになっている部分をデータや第三者の生の声を用いて可視化して、変化し続けていくことが大切ですよね。熊本さん、中嶋さん、ありがとうございました。
(この記事は2021年3月に公開されたものです)