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相互理解にこだわりながら、いかに効率よく母集団形成するか
松本:まず、御社の採用課題を教えていただけますか?
麻野:スキルマッチとカルチャーマッチの両方にかなりこだわっていて、ターゲットが限られるので、やっぱりまだまだ簡単には採用できないんですよね。
徳田:そうですね。現場で課題に感じているのは、「相互理解」と「母集団形成」の2点です。シリーズAというフェーズかつ、大手企業様をクライアントとする業態なので、ハイクラス・幹部クラスの採用活動が中心となるのですが、スタートアップにハイクラスの方をお招きするとなると深い相互理解が必要となります。そのために候補者様との関係の醸成に力を入れていると、今度は母集団形成にまで頭が回らなくなってしまうことがあります。
松本:そういった中で工夫されていることは?
麻野:選考プロセスはかなり構造的に整理していますね。一次面接ではスタイルフィットを、二次面接では「ワークサンプルテスト」でスキルフィットを、最終面接ではビジョン共感やエンゲージメントを見極める、という構造で組み立てています。
松本:選考プロセスに乗る一歩手前の、サーチングのところも難しそうですね。今のフェーズだとリファラルが最適だと思いますが、リファラル一本依存だといずれ採用計画が追いつかなくなる瞬間が来ると思います。そのあたりはどう考えていますか?
徳田:おっしゃる通り、今はリファラル中心でも組織を創っていけるとは思います。ただ、会社の認知がある程度獲得できている現状を考えると、今後はスカウトやエージェントも効果的に活用していきたいと考えています。
麻野:エージェントに関しては、弊社のことを理解してくださる会社様に絞って、深くお付き合いする方がよいかなと思っています。
稀有なケイパビリティを持つ人材が、立て続けに2名内定
松本:そんな中で直近、「LIBZ 幹部ドラフト」から、ハイレイヤーの方が立て続けに2名決まりましたね。それぞれ、採用を決めたポイントを教えていただけますか?
麻野:インサイドセールスのマネジメントをお任せするAさんと、AIに関する戦略全般を担っていただくBさんですね。それぞれご説明します。
Aさん
インサイドセールスの立ち上げ経験、特にSDRのご経験が豊富な方。さらに数十人規模の組織マネジメント経験もお持ちでした。
スキルマッチ:
申し分のないご経験に加えて、ワークサンプルテストで提案いただいた業務プロセスや管理帳票も素晴らしいものでした。自ら手を動かして成果をつくりあげてきた方だな、と感じられたのです。当社は全員が手を動かす会社なのでそこはすごくフィットすると思いました。
カルチャーマッチ:
組織のマネジメントで失敗した経験もお持ちで、葛藤しながら乗り越えたことでマネージャーとして着実に成長されてきた印象がありました。それが当社の行動指針「Act for people」にリンクするなと。さらにその失敗を正直に話してくれたことは「Be true」、仕事に自ら手を動かして取り組む姿は「Craftmanship」そのものでした。
▲ナレッジワーク社の行動指針
Bさん
研究員として長く活躍されてきて、AIの設計に関して十分な実績とご経験のある方。
スキルマッチ:
現職でも執行役員としてご活躍されており、AIに関する深い知識と経験に加え、チームを自ら構築してマネジメントするスキルもお持ちでした。選考を通じてAIを活用したプロダクト開発についても議論を重ねて、十分にその実現をリードしていただける方だという確信に至りました。
カルチャーマッチ:
コミュニケーションに配慮する気持ちのよい姿勢があり、一緒に働く人のことを気づかうことができる点が「Act for people」だと思いました。また、当社はリファレンスチェックも導入しているのですが、そこでの評判も非常に良かったのが印象的でした。さらに研究職一筋ではなく、直近でスタートアップ2社をご経験されていて、変化の大きい環境への適応力がありそうなところも安心感がありました。
松本:スキルやご経験だけでもレアですが、さらに人物面をかけ合わせると、かなり稀有な人材ですよね。勢い重視のスタートアップとは異なり、御社が狭いケイパビリティをあえて狙いにいっていることがよくわかります。
麻野:そうですね。優秀な方が2名立て続けに決まったので、うれしい驚きでした。Bさんは特に、まだ「求人」という形にもなっていない潜在的なポジションニーズだったので、ありがたい出会いでしたね。
「スカウトとエージェントのいいとこどり」のスキーム
松本:ではそんなお2人とのご縁をつないだ「LIBZ 幹部ドラフト」のご活用について、詳しくお話をお聞かせください。
このサービスのポイントは、
・候補者は全員、コンサルタントが面談済みの転職アクティブ層
・採用キーマンが直接ワンクリックで立候補できる
・人材紹介会社によくある「担当エージェントガチャ」がない
という点です。御社にはどのあたりがハマった感覚がありますか?
徳田:当社にとってはいずれも大事なポイントで、運用工数がだいぶコンパクトな上に、効果がコントローラブルな点がありがたかったですね。
それに加えて、コンサルタントの方の緻密なフォローにも助けられました。変化の大きいスタートアップでは、候補者様のケイパビリティに合わせてポジションを検討するケースも多いので、選考中の候補者様とのコミュニケーションもどうしても複雑になりがちです。今回のBさんの場合も、途中で当社に対する理解にズレが生じるようなシーンがあったのですが、担当コンサルタントの小野さんがすぐに察知して間に入っていただき、丁寧かつスピーディに対応いただけたことでご縁に至りました。その伴走のクオリティの高さに、本当に驚きましたね。
麻野:従来のダイレクトリクルーティングの仕組みと、スタートアップ特化型のエージェントのサポートをかけ算したようなサービスですよね。
松本:ありがとうございます。まさにそのようなコンセプトでサービス開発をしております。
採用において、「出会う」と「口説く」はまったく別のステージですよね。「出会う」ステージには、エージェントではなく企業にレバーがあるべきで、プロダクトの工夫により、直接、かつ簡易にアクションできることを重視しています。一方で「口説く」ステージにはやっぱり人のサポートが必要で、まさに小野が伴走したように、候補者様の心の動きに寄り添い、ズレを解消していく動きが重要だと考えています。
徳田:「直接、かつ簡易に」とありましたが、最初の「立候補」というアクションは本当にハードルが低かったので驚きましたね。求人票を作って、スカウト文面を考えて…という一連の工数が一切ありませんから。
麻野:あの作業は本当に大変だもんね(笑)。当社でも一部、業務委託メンバーがスカウトを運用していて、それをCTOがサポートしているのですが、あまりにも工数が重いのが課題で、HRで巻き取ろうか?という会話をつい最近したばかりです。
松本:CTOのような採用キーマンに、例えば朝の5分間を使って「LIBZ 幹部ドラフト」を見てもらい、直接ワンクリックで立候補してもらうというのはどうでしょうか?サーチングの作業を分業せず、「採用したい人に直接任せる」というのも大事にしている思想なのですが。
徳田:それに関しては、当社の場合はまだちょっと葛藤があるというのが正直なところです。現にリーダークラスの方は採用に参加してもらっていますが、メインミッションがある中でキャパを超えるとどうしても精度が落ちてしまいがちです。それは当然のことなので、優先順位としては、まずはリファラルをお願いしているような状況です。
能動的にシステムを見に行くことは難しくても、受動的にキャッチできる…たとえば精度の高い方がリコメンドとして届いてその中から選ぶ、という世界観であれば、やや実現可能性が上がるかもしれません。
松本:まさに今、Slack等と連携して適切な人に精度の高い情報が届くように開発を進めています。ご期待に添えるように頑張りますね!
もうひとつ、「LIBZ 幹部ドラフト」の個人側にとっての大きなポイントとして、「経営者と早い段階で直接話せる」というのがあります。今回のAさんの場合、最初の相互理解面談で麻野さんとお話しできたのが非常に良い候補者体験になったようです。
麻野:ありがとうございます。創業の頃から、何よりもまず自分が動いて仲間を集めることを大事にしてきたので、早い段階で出ていくことはまったく違和感なくやらせてもらっています。もう、徳田に言われるがままに会わせてもらってますね(笑)。
徳田:まだまだ認知の薄いスタートアップですので、直接リーダー陣から正しい情報提供をすることや、ご活躍イメージのすり合わせをさせていただくことが重要と考えています。「LIBZ 幹部ドラフト」はその点、高い専門性・ご実績をお持ちの候補者様がリストに揃っているので、経営層が最初から時間を割くという判断がしやすいと思いました。
当社は特に独自の選考プロセスを踏むので、一番最初の面談での動機づけがその後の成功の鍵となります。ですから「一番最初に経営者と話す」というUXは、企業側としてもかなり重要だと感じています。特にエンゲージメントを重視している企業なら、なおさらです。
Will型マッチングが、本質的ではないフィルタリングを排除する
松本:さて、「LIBZ 幹部ドラフト」は今年10月にリニューアルしました。「Will(叶えたいこと)によるマッチングの実現」という思想をより色濃くUIUXに反映させ、候補者様の経歴だけでなく、今後チャレンジしたいことやビジネスを通して成し遂げたいことなど、転職に関するインサイト情報を可視化しました。
徳田:まさに初期の「立候補」のフェーズで、候補者様のインサイト情報がもっと知りたいと思っていたところなので、非常にありがたい進化だと思っています。
当社ではエンゲージメントを大切にしているからこそ、例えば「セールスのメンバー50名をマネジメントしていた」という経歴情報だけでは立候補できないんです。「ここからキャリアを大きく変えていっても、スタートアップでイチから事業と組織を創りあげていきたい」というような、未来に向けたご本人の意思が知りたい。だからインサイト情報が拡充されるのは願ったり叶ったりです。
松本:ありがとうございます。これは「即戦力採用」という言葉が生んだマイナスの側面だと思っているのですが、転職する個人側の負として、「過去の延長線上のスカウトしか来ない」というのがあるんです。でもご本人はきっと、何かを変えたくて転職をしているはず。特にハイクラスの方は、ただ職場を変えるだけではなくて、もっと大きなキャリアの変化を求めている方が多いのです。
麻野:その観点はおもしろいですね。たしかに当社に最近入社したメンバーで、大手外資系一筋だった人がいるのですが、やはりオファーは外資ばかりで、スタートアップはうちだけだったと話していました。挑戦したくて転職しようとしているんだから、出会いの段階からもっとWillベースであるべきですね。
松本:そうですよね。従来の選考でもきっと面接の過程で、いつかはそういうWillを話す機会があるとは思うのですが、だったら一番最初の出会いの段階でそれが可視化されているほうがお互い効率的なはずなんですよね。
もう一点、マッチングの思想で言うと、私たちは「性別」はもちろん「年齢」のフィルタリングも排除したいと考えています。その点、御社は年齢にまったくこだわっていませんよね。
麻野:そうですね。実は年齢については、以前別の場で松本さんに聞かれて初めて気づいたぐらいなんです。「あ、他社は年齢を気にするんだ!」って(笑)。本当に気にしたことがなくて…。
徳田:よく聞く話では、マネジメント経験の浅い経営者の方だとどうしても、年齢の高い方をどうマネジメントしていいのかわからないと感じることが多いようです。その点、当社は経営陣もマチュアなので何の問題もなくお迎えできているのだと思います。
麻野:たしかに、自分が起業したときはもう結構いい年齢だったからかな(笑)。一緒に起業したCTOもそうですが、それでもすごく手を動かしていましたからね、自分たちで。だから年齢は関係ないと思っているのかもしれません。私自身、10歳年上の部下とも仲良くさせてもらってた経験もありますし。逆に、例えば我々40代のメンバーをマネジメントする20代とかが出てきたら、なんだかワクワクしますけどね。
また、40,50代の方には、給与はスキルやご経験に相応の額をお支払いしますが、「入社段階で役職にこだわるのはやめてください」とストレートに伝えています。40歳を過ぎた方のほうが意外とこだわらなかったりするんですよ。30代前半とかの方が、「自分は何者になれるのか」という不安からの役職へのこだわりみたいなのが見え隠れする気がするんですよね。でも、いざ高い役職に就く経験をしてみると、役職そのものが仕事のやりがいをもたらしてくれるわけではないことに気づいたりしますよね。そういう経験があるから、役職や肩書きよりも、「組織として成果を出すために適切な役割」という視点で考えてくれます。
そもそも自信のある方は、入社段階での役職にはあまりこだわらないですよね。当社にも大手で長年営業責任者を務めてきたメンバーがいますが、今は「セールス」っていう肩書で楽しそうに働いていますよ(笑)。
努力すれば優秀人材にリーチできる時代。経営者こそ採用に投資を
松本:これまでのお話を聞いていて、他社が躊躇しがちなことを意志を持って貫いている姿勢がさすがだなと感じました。最後にぜひ、変化の激しい時代の中で採用活動に取り組んでいる企業にメッセージをお願いします。
麻野:今の時代の企業にとって最も重要なのは、人材であり、採用だと思っています。そう言うと皆さん同意してくださるんですけど、では実際どのくらい経営者が採用に時間を使っているかというと、それほど多くの時間を割いていないことが多いように感じます。
そういう状況の中で、経営者が直接、より多くの時間を投資して採用シーンの前面に出ていくことは、企業の競争優位性を高められる絶好のチャンスだと思います。
先輩経営者であるメルカリの山田進太郎さんに、「会社が僕たちくらいのステージのタイミングで、採用にどのぐらいの時間を割いていましたか?」と聞いてみたら、「5割ぐらいかな」という答えが返ってきて驚いたことがあります。そのぐらい、経営者が直接採用に関わることは大事なんですよね。
少し前の時代に比べると、自分たちの努力次第で良い人が採用できる時代になってきているのではないでしょうか。従来型の大手人材紹介会社に頼ることしかできなかった時代は、私たちのようなスタートアップは、優秀な人材にリーチすることすら難しかった。でも今は、ダイレクトリクルーティングがあったり、スタートアップ特化型の人材紹介エージェントがあったり、良い時代になったなと思っています。
さらにLiBさんみたいな、良いところをかけ合わせてUIUXを進化させたプラットフォームが登場してきています。自分たちでうまく使いこなせば本当にフィットする人材に効率よく出会えるチャンスがたくさんあるので、ぜひ時間を投資してチャレンジしてみてほしいですね。
松本:ありがとうございます。私たちもご期待に応え続けられるよう、邁進します!
株式会社ナレッジワーク
https://kwork.studio/
ライティング:高嶋 朝子(株式会社LiB)